Steve Winwoodと私

安心する音がある。そして安心する声がある。
Steve Winwood。彼の存在はいつも我々世代に不思議な安心感を与えてくれる。
初めて彼を知った<While You See A Chance>は81年。ちょうど高校2年の時だ。
当時覚え立てのジャンルであった(笑)AORの1つとして認識していたものだ。
アルバム『Arc Of A Diver』もすぐに購入したが、テクノや牧歌など実にバラエティに富んでおり、この頃聴いていたAORと呼ばれるモノとは、一線を画す音作りに驚いたものだ。
82年の『Talking Back To The Night』。<Valerie>や<Still In The Game>は好きだったが、あとはあまり印象に残らない作品だった。むしろ翌年に彼がプロデュースを担当した、Traffic時代の盟友Jim Capaldiの『Fierce Heart』の方に、『Arc〜』の面影を感じる事が出来た。ヒットした<That's Love>などは、彼自身の<While〜>の亜流を組むものだったしね。
86年の『Back In The High Life』。当初『Arc〜』とは全然違うサウンドに面食らったが、SoulやReggae、各種World Musicを消化した楽曲は聴くほどに虜となり、いつしか愛聴盤の1枚に。
再録を含むベスト『Chronicles』を間に挟んで88年にリリースされた『Roll With It』。彼のソウル流儀が貫かれた黒いアルバムで、丁度ブラック・チャートに傾倒しまくっていた私の好みにピタリと当てはまった。
でも90年の『Refugee Of The Heart』はそんなに夢中にならなかった。今聴くと<One And Only Man>などいい曲が揃っているが、前作と違って華やかさに欠けていたのかも知れない。
丁度この頃に来日。横浜アリーナで肉眼で顔が確認出来る席で体験出来た、貴重なライブであった。
しかしその後に出たTraffic名義の『Far From Home』は買わなかった。
この頃にはSpencer Davis GroupやBlind Faithなんかも知識の一環として聴いており、勿論その中にTrafficもあった。しかしいずれもソロ時代の音とはかけ離れていて、私の好みとはかなり違っていた。
やはりこのアルバムもポップさには相当欠けていたので、聴いた後はかなり落胆したものだ。
だが97年の『Junction Seven』は打って変わり、共同プロデュースにNarada Michael Waldenを迎えた今風R&Bの1枚。聴きやすさに重点が置かれ、Des Reeなんかもデュエットに参加した当該作は、あの『Arc〜』を彷彿とさせるメロディアスな雰囲気に満ち溢れていた。だが彼独特の神通力はここでは失われてしまい、ただのR&Bアーティストになってしまった感は否めなかった。
彼独特の吸引力のあるサウンドが復活したのが、2003年の『About Time』。
3人編成のシンプル・イズ・ベストな音作り。1曲1曲が実に丁寧に作られていて、魅惑のハモンド・オルガンも随所で鳴り響く。オリジナルは言うに及ばず、Timmy Thomasのカヴァー<Why Can't We Live Together>も素晴らしい出来映えだ。
この後にフジロックで来日。これを見た友人の話では、見ていた人間こそ少なかったが、内容は相当に良かったらしい。行けず無念。
そして新作『Nine Lives』。
強固たる路線を築き上げる事によって完成度を高めた前作とは少し違い、バラエティに富んだ音楽性を見せている所は、あの『Back In〜』を彷彿とさせる。だが収録曲には圧倒的なガッツが漲っており、Eric Clapton参加の<Dirty City>や<Hungry Man>における魅惑のメロディ展開は、彼をずっと追ってきた人間なら、興奮を禁じ得ないであろう。まだ購入したばかりなので多くは語れないが、何度か聴き込む度に凄さがひしひしと伝わっていくのだろう。
私と彼の楽曲との思い出を駆け足で紹介する形になってしまったが(専門的な事はレコード・コレクターズ6月号を読んで下さいまし)、もしこの駄文が彼に興味を持つキッカケになってくれれば幸いだ。
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